【読書】「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」まとめてみた

気分変調症

どうも、元引きこもりブロガーのサイトウです。
今回は「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」という本を紹介します。

僕はこの本のおかげで、子供のころからずっと悩んできた「生きづらさ」が説明できるようになりました。

  • 人との関わりが苦手だったり
  • 落ち込みやすかったり
  • 何をやっても続かなかったり

これらは性格ではなく、病気の症状だったようです。^^;

この記事では、気分変調性障害当事者の立場から、本の要点をまとめました。
「あれ、自分のことかも」と思った方は、ぜひご覧になってみてください!

気分変調性障害とは?

まずはじめに、気分変調性障害の特徴を見てみましょう。

診断基準

気分変調性障害(気分変調症)は「持続性抑うつ性障害」とも呼ばれ、抑うつ状態が長期にわたって続く病気です。
診断基準(DSM-IV-TR)は、次のとおり。

(1)憂鬱な気分がほとんど一日中存在し、少なくとも二年間続いている。憂鬱な気分がない日があっても憂鬱な気分がある日のほうが多い(子供や青年は、いらだたしさとして感じられることもあり、期間は最低一年間続いている)。

(2)憂鬱な気分のときには次のうち、二つ以上が存在すること。
・食欲の減退、あるいは過食(非定型の特徴を持つ場合)
・不眠、あるいは睡眠過剰(非定型の特徴を持つ場合)
・気力の低下、または疲労感
・自尊心の低下
・集中力の低下、または決断困難
・絶望感
(引用元:水島広子「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」位置No.283)

アメリカでは、一生のうちに気分変調性障害にかかる人は約6%で、男性よりも女性のほうが3倍多いことがわかっています。

うつ病との違い

気分変調性障害の診断基準は、うつ病(大うつ病性障害)のものとよく似ています。
うつ病との主な違いは、下記のとおりです。

気分変調性障害 うつ病
発症のきっかけ わからないことが多い わかることが多い
抑うつ状態のときの症状 診断基準のうち、2つ以上 診断基準のうち、4つ以上、かつ2週間のうちほとんど毎日

その他、似たような病気としては、

  • 反復性うつ病
  • 双極Ⅱ型障害
  • PTSD
  • 社交不安障害

などがあげられます。

併発しやすい病気

気分変調性障害の人は、うつ病になりやすいこともわかっています。
ある研究によると、気分変調性障害の人のうち79%が、うつ病も経験したことがあるとのこと。

僕も10代のころ、ひどいうつ状態になったことがあります。

気分変調性障害とうつ病を併発した状態は、「2重うつ病」と呼ばれます。

その他、併発しやすい病気としては、

  • アルコール依存
  • 薬物依存
  • 摂食障害
  • 社交不安障害

などがあげられます。

気分変調性障害が原因で、ほかの病気は結果

ほとんどの場合、気分変調性障害は、ほかの併発しやすい病気より先に発症することがわかっています。
気分変調性障害が「原因」で、ほかの病気は「結果」だということです。

たとえば社交不安障害の場合、気分変調性障害による「自分はダメな人間だ」という思い込みから、

  1. 人からの評価が怖くなる
  2. コミュニケーションを避けるようになる
  3. 「自分はダメな人間だ」という思い込みがさらに強くなる

といった悪循環に陥ってしまうことが考えられます。

ところが、このあと紹介するように気分変調性障害は見過ごされやすく、併発した病気だけが治療されることも少なくありません。

僕自身、ずっと社交不安障害を治療してきました。

気分変調性障害は、軽いうつ病ではない

症状だけ見ると、うつ病よりも軽い気分変調性障害ですが、だからといって軽い病気というわけではありません。
実際の生活への影響に注目すると、うつ病よりも障害度が高いことがわかっています。

  • 対人関係が困難
  • 健康状態が悪い
  • 社会機能や就業機能が低い

なぜこんなことになるかというと、気分変調性障害には「性格と間違われやすい」というやっかいな特徴があるからです。
性格と間違われやすい理由は、主に2つあります。

  • きっかけがあいまいだから
  • 病気としての歴史が浅いから

きっかけがあいまいだから

気分変調性障害は、思春期前後に明らかなきっかけがなく「いつの間にか」発症することが多いです。

さらに気分変調性障害には、物事を「自分をいじめるような形」で捉える傾向があります。
結果的に、「自分はもともとこういう性格で、ダメな人間なんだ」という、誤った考え方にとらわれてしまうわけです。

病気としての歴史が浅いから

気分変調性障害が病気として認められたのは、1980年代のこと。
まだ歴史が浅いため、医療の現場でも「性格の問題」と誤解されてしまうことがあるようです。

もし性格の問題として扱われてしまった場合は、セカンドオピニオンが推奨されています。

病気として認めることが大切

この本の中では、性格と間違われやすい気分変調性障害を、病気として認めることの大切さが繰り返し強調されています。
気分変調性障害を病気として扱うメリットを、2つ紹介します。

  • 辛さが和らぐ
  • 問題と向き合えるようになる

辛さが和らぐ

同じ症状でも、とらえ方によって辛さは変わります。
ここであらためて、気分変調性障害の特徴を見てみましょう。

気分変調性障害の診断基準は先に紹介したとおりですが、同じDSM-IV-TRの中では、より現実に即した観点から、次のような代案が記載されています。

(2)憂うつな気分のときには、以下のうち三つ以上が存在すること。
・低い自尊心または自信、または自分が不適切であるという感じ
・悲観主義、絶望、または希望のなさ
・全般的な興味または喜びの喪失
・社会的引きこもり
・慢性の倦怠感または疲労感
・罪悪感、過去のことをくよくよ考える
・いらいらしているという主観的感覚、または過度の怒り
・低下した活動性、効率、または生産性
・集中力低下、記憶力低下、または決断困難に反映される思考困難
(引用元:水島広子「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」位置No.337)

これらの特徴が、「もともとの性格でどうしようもないもの」だとしたら、あまりにも辛すぎます。
そこで「病気」という発想が役に立つわけです。

あくまで気分変調性障害の症状であり、本来の自分を反映したものではありません。
ほかの病気の症状、たとえば発熱を自分の意思で下げられないように、症状をコントロールできない自分を責める必要もありません。

問題と向き合えるようになる

「自分は病気である」と受け入れると、「治療すれば治る」と思えるようになります。
逆に病気だという自覚がない状態でできることは、せいぜい「ダメな自分」を隠すことくらい。

  • 普通にふるまおうと無理をして、うつの症状が重くなってしまったり
  • 人との関わりを避けようとするあまり、引きこもってしまったり

そんな自分を「やっぱりダメなやつだ」と否定して、負のスパイラルに陥ってしまいます。

これまで性格だと思ってきたことを「病気扱い」することに抵抗を覚えるかもしれませんが、病気と認めないことは、誤ったストーリーを肯定することになってしまうのです。

僕の経験上、「○○のせいで、今の自分はこうなったんだ!」みたいなストーリーはまったく当てになりません。苦笑
病気を認めることが、治療の第一歩になる

物事を「自分をいじめるような形」で捉える傾向がある気分変調性障害の人は、

  • 「病気というのは、もっと重い人のことを言うのではないか」
  • 「病気のせいにするのは言い訳だ」
  • 「自分の努力が足りないだけ」

といった反応が多く見られます。
だからこそ、自分の病気を認めること自体が、治療の大きな一歩になるわけです。

気分変調性障害の治療法

気分変調性障害の治療法は、大きく分けて2つあります。

  • 薬物療法
  • 精神療法

ちなみに個人の内面に焦点を当てる「精神分析」は、「性格の問題」という誤解を助長するリスクがあるので、推奨されていません。

薬物療法

気分変調性障害に対しては、抗うつ薬による薬物療法が有効です。
多くの研究から、約半数の人に効果があることがわかっています。

抗うつ薬が有効なことからも、気分変調性障害が性格ではなく「気分障害」であることがわかりますね。

健康上の理由で抗うつ薬を服用できない場合を除いて、まずは「十分な量の服用」が推奨されています。

精神療法

気分変調性障害に対する精神療法としては、次の2つが紹介されています。

  • 認知行動療法
  • 対人関係療法
認知行動療法

「認知行動療法」とは、物事のとらえ方や行動に働きかけることで、症状の改善を目指す治療法です。
気分変調性障害に対して、まだまだデータが少ない精神療法の中では、比較的効果があることがわかっています。

対人関係療法

この本のメインテーマでもある「対人関係療法」は、問題となっている対人関係に働きかけることで、症状の改善を目指す治療法です。
うつ病に対しては、薬物療法や認知行動療法と同等以上の効果があることがわかっています。

気分変調性障害に対しては、まだあまりデータがありませんが、著者の経験から有効な治療法の一つとして紹介されています。

対人関係療法は、抗うつ薬が使えない(効かない)人や、対人関係の困難を抱えている人に用いられます。

対人関係療法の考え方

ここからは、対人関係療法について詳しく見ていきましょう。
基本的な考え方と、気分変調性障害と向き合うために役立つテクニックを紹介していきます。

対人関係療法の基本

対人関係療法は、もともとうつ病の治療のため1960年代に開発されました。
現在では、双極性障害(躁うつ病)や摂食障害、不安障害などにも効果があることがわかっています。

対人関係療法では、精神的な問題の背景には、対人関係の変化があると考えます。
たとえば、対人関係のトラブルで引きこもってしまうこともあれば、引きこもった結果、対人関係が大きく変わることもあるわけです。

対人関係の問題は、次の4つの領域に分類できます。

  • 悲哀(重要な人との別れと向き合えていない)
  • 役割をめぐる不一致(重要な人とのすれ違い)
  • 役割の変化(生活の変化に適応できていない)
  • 対人関係の欠如(上記3つのいずれにも当てはまらない)

対人関係療法では、問題となっている領域を選び、それにうまく対処できるようになることで、症状にもいい影響を与えることを目指します。
間接的なアプローチですが、高い効果が実証されていることは先に紹介したとおりです。

役割をめぐる不一致

ここでは、個人的に、気分変調性障害の人にとくに役立ちそうだと感じた「役割をめぐる不一致」について紹介します。

「役割期待のずれ」とは

対人関係療法では、対人関係の問題を「役割期待のずれ」として考えます。

僕たちは、あらゆる人に対して常に何らかの役割を期待しています。
「この人はこんな感じの人だろう」と勝手に想像しているわけです。

自分と他人の期待にずれ(不一致)があると、ストレスを感じます。

期待 ストレスを感じる場面
自分から他人
  • やってほしいことをやってくれない
  • やってほしくないことをやられる
他人から自分
  • やりたくないことを期待される
  • やりたいことを期待されない

「役割期待のずれ」を解消する方法

「役割期待のずれ」を解消するには、お互いの期待を伝えたり、ずれを修正したり、建設的なコミュニケーションが必要です。

自己主張が苦手な気分変調性障害の人が、とくに意識したいポイントを3つ紹介します。

  • 自分の感情を大切にする
  • 自分の気持ちを伝える
  • 相手の意図を確認する

それぞれ詳しく見てみましょう。

自分の感情を大切にする

気分変調性障害の人の特徴の一つとして、ネガティブな感情を「未熟な証拠」と受け止めて隠そうとする傾向があげられます。

僕も「人を悪く思ってはいけない」という無意識レベルの思い込みがありました。

でも感情は、自分の身に起きていることを教えてくれる貴重なサインです。
「どんな感情も、感じた以上は正しい」ということです。

もし相手に対してネガティブな感情が湧いてきたときは、その感情を見てみぬふりするのではなく、

  • 自分は相手に何を期待しているのか
  • 実際に相手がやったことは何か
  • 相手は自分に何を期待しているのか
  • 実際に自分がやったことは何か

一つずつ整理してみると、建設的なコミュニケーションにつながります。

自分の気持ちを伝える

気分変調性障害の人は、重要なことをほとんど伝えず、察してもらおうとする傾向にあります。
「自己主張=わがまま」という思い込みがあったり、伝えた結果どうなるかわからず不安だったりするからです。

対策は2つあります。

まず「ほかの人が今の自分と同じ状況に置かれたら、我慢しろと言うだろうか」と考えてみる。
状況を客観的に見られるようになって、思い込みから抜け出しやすくなります。

次に、伝え方を工夫すること。
「あなた」を主語にすると角が立つので、「私」を主語にして、自分の気持ちを伝えることがポイントです。

僕の父は、ときどき冷たい言葉を浴びせてくることがありました。
子供のころからずっと我慢していたけど、ある時、「そいういう言い方されると傷つくからやめて」と伝えたら、ピタリと止まって驚いたことがあります。
伝え方を工夫した結果、もし相手が怒り出してしまったとしても、それは自分ではなく相手の問題です。
相手の意図を確認する

気分変調性障害の人は、相手の意図を確認せず、察しようとする傾向もあります。
結果的に、相手の意図をネガティブに誤解してしまうことも少なくありません。

役割期待のずれを解消するためには、自分の期待を相手に伝えるだけでなく、相手の期待を知ることも大切です。
相手の意図を確認するのは勇気がいりますが、気分変調性障害の人は、ほとんど最悪の受け止め方をするので、たいていは成功体験に終わります。

自分の気持ちを伝えた結果、相手の気持ちを知れることもあります。

僕は、母がやたら話しかけてきて「うっとおしいな」と感じることがありました。
沈黙が気まずいから無理やり話しかけてくるものだと思っていたけど、話の流れで確認してみたら、ただ話すのが好きだったみたいです。

気分変調性障害を治すために心がけたいこと

気分変調性障害を治療する過程で、とくに意識したいことを3つ紹介します。

  • 病気であることを認める
  • 症状を見つける
  • 人間関係の変化を受け入れる

病気であることを認める

先に紹介したように、気分変調性障害はきっかけがわかりづらく、また症状として「自分をいじめるような形」で捉えがちなので、自分が病気であることを認めづらい傾向があります。

病気を認めることは、甘えでも言い訳でもありません。

「自分は大丈夫」と思う人ほど要注意。
余裕がない状態でも頑張ってしまうのが、気分変調性障害の人の特徴だからです。

普通に暮らしているだけでも頑張りすぎているくらいなので、まずはゆっくり休みましょう。
頭を忙しくしない(ボーッとする時間を作る)ことが回復のポイントです。

症状の「見つけ上手」になる

自分で症状を見つけられるようになると、症状に振り回されず、治療に前向きに取り組めるようになります。

症状の見つけ方は、次の2つ。

  • 「自分をいじめるような形」のものはすべて疑ってみる
  • 他の人にも同じことを要求するか考えてみる
僕は何度も意識しているうちに、少しずつ症状を見つけられるようになってきました。
これまで漠然とした生きづらさだったものが病気の症状として説明できるようになると、心が楽になります。

人間関係の変化を受け入れる

気分変調性障害が治ってくるにつれて、人間関係が変化します。
以前より親密になれることもあれば、逆に「距離を置いたほうがいい」と感じることも。

治療の過程では、一見すると望ましくない変化も受け入れる必要があります。
症状があるときとないときでは、相性がいい人や、ちょうどいい距離感が変わるからです。

いつまでも同じ関係にとどまり続けると治療の妨げになるだけでなく、相手のためにもなりません。

身近な人にできること

この記事の最後に、気分変調性障害の家族や友人など、身近な人ができることを3つ紹介します。

  • 治療を見守る
  • ほめ方に注意する
  • 自己表現を受け止める

治療を見守る

まずは、気分変調性障害を正しく理解することが大切です。
ただでさえ、性格と間違われやすい病気なので、本人を責めないように注意する必要があります。

時には、なかなか変わろうとしない本人に対して、イライラしてしまうこともあるかもしれません。
でもそれは、本人の努力不足ではなく病気の症状によるものです。

誰よりも苦しいのは本人だということを、忘れないであげてください。

ほめ方に注意する

よかれと思ってほめたら、逆効果になってしまうことがあるので注意が必要です。

気分変調性障害の人は、少ないエネルギーを使ってなんとか普通にふるまおうとします。
その結果をほめられてしまうと、かえってプレッシャーになってしまうのです。

ほめるときは、結果ではなく過程に注目して、「苦しい中、頑張ってきたんだね」という感じで声をかけてあげてください。

自己表現を受け止める

気分変調性障害から回復してくると、自己主張や感情表現ができるようになってきます。
結果的に、不平や不満が出てくることも。

それは回復のプロセスが着実に進んでいる証拠です。
できる範囲でかまわないので、やさしく受け止めてあげてください。

おわりに

僕はこの「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」を読んだとき、これまで疑うまでもなく性格の問題だと思ってきたことが、ことごとく病気の症状だと書かれていて、にわかには信じられませんでした。

でも、「もしこれが病気ならぜひ治療したい」と思って、精神科を受診。
その結果、「気分変調症」と診断されて、なんかちょっと安心しました。

発達障害やAC(アダルトチルドレン)、HSPなど、生きづらさを説明する言葉はたくさんありますが、ようやくしっくりくる言葉に出会えたようです。

この本の一節に、こんなことが書かれています。

気分変調性障害の人は人生をとても深刻に考えていることが多いものです。「人はなぜ生きるか」などといった哲学的なテーマを深く考えている人も少なくありません。(中略)その結論が「うつ病的」であるだけでなく、「人はなぜ生きるか」というテーマの設定自体も「うつ病的」だということです。
(引用元:水島広子「対人関係療法でなおす 気分変調性障害」位置No.965)

不覚にも、ちょっと笑ってしまいました。
たしかにメンタルが落ちると、生きる意味をよく考えます。苦笑

意味とか考える暇もないくらい、充実した生活を送れるようになりたいです。
できることから始めていこうと思います。

 

ではまた!

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